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【高精度】HR202L湿度センサーとは?電子工作・IoTで使える「抵抗式ポリマーセンサー」徹底解説‼

電子工作やIoT開発において、環境データを取得することは基本中の基本です。

特に、湿度は快適な生活空間の維持や、製品の品質管理、農業管理など、多岐にわたる分野で重要なパラメーターとなります。

数ある湿度センサーの中でも、シンプルながら信頼性の高いセンサーとして知られているのが、HR202Lです。

この記事では、HR202Lの基本的な仕組みから、正確な湿度測定に必要な温度補償の概念、そしてArduinoRaspberry PiといったマイコンでHR202Lを効果的に利用するための回路設計やプログラミングのポイントまで詳しく解説します。


 

HR202Lとは? その仕組みと構造

 

HR202Lは、有機ポリマー(高分子)を感湿材料として利用した抵抗式湿度センサーです。このセンサーの核となる特性は、周囲の相対湿度(RH)の変化に応じて、センサー素子自体の抵抗値が変化することです。

 

1. 湿度感知のメカニズム

センサー内部には、湿度を吸収・放出する性質を持つ特殊な高分子膜が挟まれています。

  1. 吸湿(湿度上昇): 周囲の湿度が高くなると、ポリマー膜が水蒸気を吸着します。

  2. 抵抗値の減少: 水分を吸着することで、ポリマー膜の電気抵抗が減少します。

  3. 放湿(湿度下降): 湿度が低くなると、ポリマー膜から水分が放出され、抵抗値が増加します。

マイコン側でこの変化する抵抗値を測定することで、間接的に相対湿度を求めることができます。HR202Lの標準的な中心抵抗値は、25℃、60%RHの環境下で約31kΩです。

 

2. HR202Lの絶対条件:「交流(AC)駆動」

HR202Lを扱う上で最も重要な注意点は、直流(DC)ではなく、交流(AC)で駆動しなければならないという点です。

  • 直流駆動の危険性: センサーに直流電圧をかけ続けると、高分子膜内で電気化学的な反応(電気分解やイオン移動)が起こり、素子が不可逆的に劣化(分極)してしまいます。これにより、センサーの精度と寿命が著しく低下します。

  • 交流駆動の必要性: 電源として正弦波や矩形波などの交流信号(通常500Hz~2kHz)を使用することで、分極を防ぎ、HR202L長期安定性を保つことができます。

 

🔍 正確な湿度測定に不可欠な「温度補償」

HR202Lの抵抗値は、湿度だけでなく、周囲の温度によっても大きく影響を受けます。つまり、同じ相対湿度でも、温度が違えばセンサーが出力する抵抗値は異なってしまいます。これが、HR202Lを使った高精度な湿度測定において、温度補償が必須となる理由です。

 

1. 温度依存性の問題

センサーのカタログやデータシートには、湿度と抵抗値の関係を示すグラフが掲載されていますが、このグラフは特定の基準温度(例:25℃)で測定されています。

実際のIoTデバイスが動作する環境では温度が変動するため、得られた抵抗値をそのまま湿度に換算すると、大きな誤差が生じます。

 

2. 組み合わせるべき温度センサー

この問題を解決するため、HR202Lを使用する回路には、必ずサーミスタデジタル温度センサー(例:LM35, DS18B20など)を併設し、常に温度を同時に測定する必要があります。

  1. 温度データの取得: 併設した温度センサーで、現在の環境温度Tを測定。

  2. 補正計算の実行: HR202Lから得られた抵抗値Rを、測定温度Tに基づいて補正するための計算(補正式はデータシートから導出)をマイコン側で実行します。

  3. 正確な湿度の算出: 補正された抵抗値から、真の相対湿度を算出します。

この温度補償を行うことで、HR202Lのポテンシャルを最大限に引き出し、安定したデータロギング環境モニタリングが可能になります。

 

💻 マイコンでの利用:具体的な回路とコーディング

 

HR202LArduinoESP32などのマイコンで利用するには、交流駆動と抵抗値測定のための専用回路が必要です。

 

1. 交流駆動回路の設計(RC発振回路やタイマー利用)

マイコンのGPIOピンは通常直流(DC)を出力しますが、これを使って交流を生成する方法はいくつかあります。

  • タイマー割り込みとHブリッジ回路: マイコンのタイマー割り込みを利用し、2つのGPIOピンから交互にHigh/Low信号を出力し、HR202Lに接続されたHブリッジ回路を駆動することで、交流信号を生成します。

  • サイン波ジェネレーターIC: より高精度なサイン波が必要な場合は、専用の波形生成IC(例:DDSチップ)を使用します。

 

2. 抵抗値の測定(分圧回路とAD変換)

 

HR202Lの抵抗値の変化をマイコンで読み取るには、アナログ入力(AD変換)が必要です。

  1. 分圧回路: HR202Lを固定抵抗と直列に接続し、分圧回路を構成します。

  2. AC電圧の読み取り: 交流で駆動されているため、分圧点でのAC電圧をそのままAD変換することはできません。このAC電圧を、ピーク検出回路RMS(実効値)検出回路でDC電圧に変換してから、マイコンのADコンバータに入力します。

  3. 抵抗値の計算: マイコンで読み取った電圧値から、オームの法則と分圧の法則を用いて、HR202Lの抵抗値Rを逆算します。

 

3. プログラミングのポイント

マイコン側では、以下の処理を実装する必要があります。

  • 高頻度のサンプリング: 交流駆動に必要な周波数(例:1kHz)でGPIOの出力を切り替える処理。

  • 温度補償アルゴリズム: 抵抗値Rと温度Tを入力として、データシートから導出した補正式に基づき、正確な湿度RHを計算する関数。

 

まとめ:HR202Lの長期安定性とIoTへの応用

HR202Lは、デジタル湿度センサーに比べて回路が複雑になるというデメリットはありますが、その長期安定性耐環境性は大きなメリットです。

適切な交流駆動温度補償を行うことで、工業用途やデータロギングなど、高い信頼性が求められるIoTデバイスに組み込むことが可能です。

特に、湿度変化に対する反応速度(上昇時20秒以内)も優れており、リアルタイムな環境モニタリングにも対応できます。

 

IoT開発において、信頼性の高い湿度センサーをお探しであれば、HR202Lは間違いなく検討すべき選択肢の一つです。正確なセンサーデータに基づいたスマートなアプリケーション開発を、ぜひ実現してください。

 

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